「し、真実の帳、虚構の褥、われらの前に開きたまえ、・・・ええと」「裏世界廻廊」「う、裏世界回路・・・!」
「もー、ねこちゃんはいつになったら覚えるん?」
「うぅ・・・ごめん。あとサナエだって」
雁真ちゃんはわたしをいつもねこって呼ぶ。サナエなのに。
「猫にしか見えないんよ、実際。『才』に『苗』で『サナエ』、横に詰めて書いちゃいかんの。
もしかして、ホントはねこって呼ばれたいんじゃない?かわいこぶってさ」
初期値になった。
急に、感情が初期値になった。
わたしは初期値の感情と初期値の静寂になり、部室(廃)の埃を指で集める作業を再開する。
埃にはAからCの等級が存在する。今わたしの指に付着しているそれは、BとCの間(どちらかと言えばB寄り)である。