事恢
例復

Anne side - 02

自動機械。

「こちらアリス、7-Cブロックに到着。」
生徒会室に通信を入れながら周囲を見渡す。
何の変哲もない市街地。
一見したところ不審な点は見当たらない。だが――
「了解(コピー)。数値上その地点は異常よ。指定した地点に向かって」
視界を共有する生徒会室のボタンから指示が出る。
この場所の精神指数は明らかに【崩壊】を指す値だ。必ずどこかに核がある。

++;

「・・・それで、次の『指定した地点』は?」
「・・・指定した地点(29)はそこから徒歩6分。そこの道を右折ね」
疲労を感じる声。しかし本当に疲れているのは私の方だ。
「おいおい」呆れる声=カサネ。「本当なんだろうな?そこに核がいるのは。まさか、誤報とか」
「はぁ?そもそも今日の計測担当はあなたでしょう。自分の計測結果も信じられないの?」
「いや、あたしはほら、自分の誤りを認められるタイプだからさ」
「責任感が無いっていうのよ。だいたいあんたは昔から――」
通信を強制的に切る。散々歩き回った上に二人の喧嘩なんて聞かされてはたまったものではない。

++;
とりあえず休憩しようと公園へ立ち寄る。さすがに休日の昼間だけあって、親子連れがそこそこに居る。
ぼんやりそういう姿を眺めているうちに、ふと違和感を覚える。
「・・・ない」
ない。無いのだ。笑い声が、いや、声のすべてが。
子供のいる公園から声がしないことがあろうか?
注意深く観察してさらに気づく。
彼らには表情も無いことに。
例えるなら決められた動作をなぞるだけの自動機械。

++;

公園から駆け出す。誰か、誰か「中身のある」人間はいないのか?

++;

コンビニエンスストア。神社。散髪屋。

++;

そのいずれの場所からも声は無い。
人はそこかしこにいるにも関わらずこの町には、あらゆる声が無かった。

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